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米・トランプ政権再登場と周縁化経済政策の核心
米・トランプ政権再登場と周縁化経済政策の核心
■トランプ再登場と“周縁化経済政策”の核心―ODINマーケティング&コンサルティング分析
2024年選挙戦・共和党再台頭に伴い、“米国第一主義(America First)”の再強化が加速。
米国トランプ政権の復権を背景に、再び世界経済の地平に暗雲が立ち込めている。米国第一主義の復活と共に推し進められているのが、中国を主要標的とした大規模な関税引き上げ政策である。だが、その本政策がもたらす影響は、想定以上に一方向的かつ短期的な効果に留まる可能性が高く、むしろ中国側が持つ構造的優位性と戦略資源によって米国経済が反撃を受ける構図が顕在化しつつある。
2018〜2020年にかけて米トランプ政権が主導した対中関税政策は、単なる貿易赤字の是正にとどまらず、中国のハイテク躍進への強烈な危機感が根底にあった。特に以下の3要素が警戒された。
半導体・5Gなどの急速な技術革新
Huawei・ZTEなどの通信覇権の台頭
製造基盤の“世界工場”としての確立
この動きは、貿易摩擦を超えて「国家安全保障・戦略経済圏の競合」へと転換。世界秩序の新たな分岐点が形成された。
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その中核を成すのが、以下の政策軸:
🧱 1. 関税政策の再強化
特に中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げる案。
一部では「60%以上の関税」も検討対象と報道されており、2018年~2020年に実施された対中関税措置の“再来以上”とされている。
これにより、中国生産に依存する米国ブランドが自国へ輸入するコストが激増し、自らの首を締める結果に。
🛑 2. 自由貿易からの脱却(保護主義の先鋭化)
多国間貿易体制(WTOやCPTPPなど)への不信と脱却志向。
自国に有利な**“2国間”の強圧的交渉**への集中(「ディール外交」)。
深化:再登場トランプ政権と「周縁化経済政策」の再構築
■ 「America First 2.0」:関税再強化と保護主義の再燃
2024年の米大統領選でトランプの再登場が現実味を帯びる中、中国製品への“超高関税”導入構想が進行中である。
特に注目すべきは、以下の新たな関税措置:
■ 「自由貿易」からの意図的離脱
米国はWTOやCPTPPといった多国間体制から距離を取り、2国間ディール外交への回帰を進めている。これは自由貿易原則からの逸脱であり、“内向き経済国家”への転換が明確化している。
トランプ政権の朝令暮改の対中関税政策(ホワイトハウス米国時間9日による)
分析:米国の“関税攻勢”は本当に中国に効いているのか?
✅ 限定的効果:中国経済への影響は“過渡的”に留まる
米国が狙うのは、中国製品の対米輸出の抑制、および自国製造業の回帰である。しかし、中国側の応答は既に周到である。
● 🇨🇳 内需強化と地域貿易圏の拡張(RCEP活用)
● 🏗️ 東南アジア・アフリカへの生産分散(脱米国志向)
● 🔄 人民元建て取引・決済インフラの整備
これにより、中国は**“対米依存体質”から“グローバル分散型供給網”へと進化**しつつあり、米国による圧力は、長期的な構造ダメージを与えるには至っていない。
🧨中国の逆襲:レアメタルとOEM支配が鍵を握る
🌍 戦略資源の支配構造
中国は現在、世界のレアアース供給の60〜70%以上を占める最大保有国である。これらは電気自動車(EV)、半導体、通信機器など、ハイテク製品の心臓部に不可欠な資源である。
中国のレアアース元素別世界シェア(2024年推定)情報源:中国国務院工業信息化管理部
元素別供給集中と戦略的示唆
1.軽希土類(La, Ce, Pr, Nd):これらの元素は、内モンゴル自治区のバヤンオボ鉱床などで産出されており、
中国の供給シェアは45〜70%と高い。特にネオジム(Nd)は、EVモーターや風力発電機に不可欠であり、
供給の安定性が重要である。
2.中重希土類(Sm以降):これらの元素は、江西省や広東省のイオン吸着型鉱床で産出されており、中国の供給シェアは
90%以上と極めて高い。これらの元素は、ハイテク製品や軍事用途に不可欠であり、供給リスクが高い。
3.供給リスクと対策:中国のレアアース供給に対する依存度が高いことから、他国は供給源の多様化やリサイクル技術の開発を
進めている。特に、オーストラリアや米国などが代替供給源として注目されている。
■ 中国の多層防御戦略
米国の関税攻勢に対し、中国は以下のような**中長期的“多層防衛網”**を展開している:
1.内需拡大と“Dual Circulation”の深化
2.RCEP圏内への供給網再編(ASEAN、アフリカなど)
3.人民元建て決済圏の形成とドル依存脱却
この結果、中国は「対米依存型経済から、分散型供給網主導国へ」と進化しつつある。
■ ハイテク資源戦略:中国のレアアース覇権
以下は、中国のハイテク資源支配の象徴であるレアアース供給シェア(2024推定):
● サマリウム、テルビウム、ジスプロシウムなど90%以上
● ネオジム、プラセオジム:70%前後
● 用途:EV、風力、軍事、半導体、光通信、MRI
この供給支配を武器に、米国の技術産業を資源面から牽制。**OEM・素材依存の米国企業(Apple、Intel、Tesla等)への“構造的圧力”**が顕在化している。
中国マーケットのグローバルにおける重要な地位という事実を替え難い
米国ブランド──Apple、Tesla、Intelを含む多くのグローバル企業は、未だに中国工場によるOEM/ODM生産に依存している。そして、これら製品を米国内に“再輸入”する際、トランプ政策によって高関税が課せられる結果、米国内のコスト構造が異常膨張する。
米国の中国に対するレア金属・産業原料・OEM製造産業の依存割合
📊【1】中国のレアアース供給・OEM依存の構造支配
《図1:中国の逆襲:レアメタルとOEM支配が鍵を握る》
● レアアース供給:中国シェア 約65%
・電気自動車、半導体、通信機器などの戦略産業の根幹資源を支配。
● Apple・Tesla・Intelの中国OEM依存:70〜80%
● 米国のハイテク企業は「製造の中国離脱が極めて困難」な構造にある。
📌 考察:
米国が関税で締め上げようとも、サプライチェーンの根幹を中国に握られている限り“ブーメラン化”するリスクが極めて高い。OEM拠点の代替には5〜10年単位の時間とコストを要する。
中国国内の調理済み食品市場規模推移
情報出所:
《図2:調理済み食品市場規模(2020~2025年)》
● 2020年:約2,000億元 → 2025年:約4,800億元(4倍増)
● 年平均成長率(CAGR):約1%
📌 考察:
中国は対米依存から脱却するため、「内需主導型経済」への転換を着実に進行中。中間層の拡大と都市化が進む中、調理済み食品などの生活型需要市場の拡張が、外圧に左右されにくい成長エンジンを形成している。
中国国内の半導体装置市場規模推移
《図3:半導体製造装置市場規模(2020~2024年)》
● 2020年:約800億元 → 2024年:約2,100億元(6倍増)
● 年平均成長率:約5%
📌 考察:
米国による先端半導体禁輸制裁(例:EUVリソグラフィ装置)への対抗として、中国は自国製造装置の国産化と技術内製化に拍車をかけている。これは**「自立型テック経済」への布石**であり、産業安全保障の観点からも極めて重要。
中国におけるNEV自動車の直近年度販売台数推移
📊【4】NEV(新エネルギー車)販売:中国グリーン産業の躍進
《図4:NEV販売台数推移(2024→2025)》
● 2024年:約700万台 → 2025年:約950万台(36%増)
● 世界最大のNEV市場としての地位を確固たるものに
📌 考察:
電動化・脱炭素のトレンドにおいて中国は世界の先頭に立ちつつある。EV販売の拡大はレアメタル需要拡大・鉱物戦略の優位性とも連動し、まさに「資源・製造・市場の三位一体」で構造的主導権を確立している。
🧠 総括:米国関税攻勢 vs 中国の構造的対応力
✅ 結論:
これらの図表から明らかなのは、「米国が高関税で“攻めたつもり”の間に、中国は静かに“盤面を支配”しつつある」という構図です。製造、資源、技術、消費の各面において一枚上手の戦略的動態が見て取れる。
⚖️ “自由経済を提唱してきた民主主義国家としての立場が矛盾化する”
✅ 自由経済への逆行事実
WTOが掲げる“関税障壁の撤廃”や“グローバルな供給最適化”という自由経済の原則に真っ向から反する動き。
米国が主導したルールに自ら背くというアイロニー。
✅ 米国ブランドへの打撃:極めて深刻
Apple、Nike、Dellなど、中国でのEMS/ODM生産に依存する企業は、部品も含めて価格上昇・再構成を迫られる。
対中生産拠点から他国へ“急激な脱出”を図れば、コストと安定性を同時に失うジレンマに。
✅ 世界経済への影響:波及は大きい
関税戦争はグローバル・サプライチェーン全体の動揺を引き起こし、特にASEANや台湾、日本、韓国も中間財供給地として直撃。
さらに、「報復関税」→「貿易縮小」→「成長鈍化」→「金融不安定」へと連鎖する恐れ。
🧠トランプ政策は「内向きの経済国家化」の強制
🏁さらに言えば、米国が長期的に損をする賭けに出ている
● 一見「強く見える政策」だが、長期的には自国産業の首を絞めるブーメラン。
● そして世界に「ルールを破ってもいいという前例」を与えかねない。
● 我々のような知略を有する国・企業は、混乱期において“冷静に利を取る布陣”を築くことが肝要。
構造的ジレンマ:トランプ式通商戦争の限界と世界経済への余波
■ 自縄自縛化する米国経済
● 高関税で米国内のコスト構造が崩壊
● サプライチェーンの再構築が想定以上に困難
● 米国ブランドが**“自国製品”すら輸入困難化**
この状況は、米国が自ら推進したグローバリズムに逆行し、「矛盾に満ちた経済ポジショニング」を露呈する。
■ 世界経済への波及
■ 長期的なブーメランリスク
● 米国の“強硬姿勢”は構造改善に結びつかない
● 自国産業がむしろ国際競争力を喪失
● 世界に「ルール破りの正当化」を示し、通商秩序の崩壊を助長
【結論】これは関税戦争ではない──“新しい経済冷戦”である
中米貿易戦争の本質は、**「貿易」ではなく「秩序の支配権」**を巡る全方位的競争であり、これは次のように集約される:
🔻米国の狙い:
デカップリングで中国の“核心技術・資源・市場”を封じ込め、
自国中心の安全保障型経済圏を再編
🔺中国の対応:
グローバル供給と戦略資源の支配を武器に、
多極化と内需強化をもって「構造的逆襲」に出る
🚨 最終的示唆:世界は「経済ブロック化 × 資源戦略国家時代」へ突入
● 世界経済は今後、「自由貿易圏」から「ブロック経済×資源覇権」へとシフト。
● 真の勝者は、柔軟なサプライチェーンと自立型技術力、戦略的中立性を持つ者。
● 日本・EU・ASEANは、この“米中の津波”の中で、如何に“非属的生存戦略”を築けるかが鍵となる。
ODINマーケティング&コンサルティング分析
2025年4月11日