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オーディンコラム

2026.07.14

世界EV・NEV産業の 技術・市場・資源・AI覇権

2023年~2026年Q1実績/2025~2040年展望

中国・米国・EU・日本・韓国・その他地域を、販売台数、収益、電池、材料、ADAS、衛星、充電、価格性能、

モデル更新速度から再評価

 

エグゼクティブ・サマリー

PSIM最終結論

世界EV市場は、もはや『ガソリン車を電池へ置き換える環境政策市場』ではない。電池化学、半導体、OS、AI、通信、電力網、鉱物精製、リサイクル、衛星測位、都市データを一台の移動端末へ統合する産業再編である。

2025年の世界プラグインEV販売は2,000万台を超え、新車販売の約4分の1に達した。中国は販売量、電池、充電インフラ、価格性能、モデル更新速度で圧倒的な実装密度を持つ。米国はTeslaを中心に車両OS、AI計算、データ閉環、急速充電規格で強いが、量産サプライチェーンと車種多様性では中国に劣る。EUは安全規制、走行性能、循環経済、ブランド工学に強い一方、電池原料・セルコスト・ソフトウェア速度が制約となる。韓国は電池セルと自動車量産の両方を持つ中間優位国である。日本はハイブリッド、品質、機械設計、安全工学には強いが、BEV専用プラットフォーム、電池量産、車両OS、充電インフラ、モデル迭代速度で後発化している。

したがって、今後の競争は『一回の充電で何km走るか』だけでは決まらない。10分で何km回復するか、冬季・衝突時に発火しないか、電池寿命後に材料を回収できるか、AIが運転・安全・駐車・ナビ・決済をどこまで統合できるか、そして価格が同級ガソリン車を下回るかで決まる。

 

出所・注記:ODIN比較指数。0~10点の相対評価であり統計値ではない。評価軸は2025~2026年の量産実績、供給網、規格、技術実装、価格競争力を統合。

 

1. 分類・調査範囲・数値の読み方

1-1. EV、BEV、PHEV、NEVは同一ではない

 

1-2. 国別×ブランド別データの限界

世界各国は登録、卸売、小売、納車、輸出、法人向けを異なる基準で集計する。さらに自動車企業はEV単独売上高・利益率を原則として開示せず、ガソリン車、金融、部品、サービスと合算する。このため本報告では以下のラベルを用いる。

 

2. 2023~2026年Q1:世界販売台数の構造

2025年は世界で2,000万台超となったが、地域構成は均等ではない。中国だけで世界の約3分の2近くを占める。2026年Q1は世界約400万台、中国約190万台、欧州約120万台、北米約32万台であり、欧州が前年同期比で成長する一方、中国は高い前年基準と政策・価格調整の影響で減速した。

 

2-1. EUのBEV実績

出所・注記:ACEA passenger car registrations, 2025 full year and Q1 2026.

 

2-2. 主要ブランド・グループ別BEV台数

出所・注記:企業発表・年次報告およびIEA/OEM公表値を基にした概数。BYDはBEVのみを分離し、PHEVを含まない。Geely系はGeely、Zeekr、Volvo、Polestar等の概算合算。

 

 

3. 国別総台数・主要ブランド構成

完全な国別×全ブランド×全年度の公開表は存在しない。以下は政府・業界団体・登録統計で確認できる主要市場と主要ブランドをまとめたものである。

 

4. 国別・ブランド別売上高・利益率

EV単独の売上高・利益率を公表する企業は少ない。したがって、企業全体または自動車部門の利益率と、EV販売比率を併記する。EV事業の採算を単純に企業全体利益率から逆算することはできない。

PSIMでは、中国EV企業の低利益率を単純な『不健全』と断定しない。価格低下は市場拡大、部材学習、量産設備稼働率、競合淘汰を同時に進める。一方で、長期的には過剰設備、地方政府支援、在庫、販売奨励金が収益を圧迫する。欧米企業は単価とブランド利益を守るが、販売量を失えば固定費負担が急速に悪化する。

 

5. EVバッテリー技術開発動向

5-1. 航続力と急速充電

CATLは2025年に第2世代Shenxingとして、LFPで800km、ピーク12C、最大1.3MW、低温5~80%を15分と公表した。2026年には第3世代Qilinとして280Wh/kg、1,000km、10C級を発表した。ただし、これらは特定試験条件・車両構成であり、一般道路の実航続と同一ではない。

出所・注記:CATL official releases, 2025-04-21 and 2026-04-21.

 

5-2. 防爆性・安全性

『防爆』という言葉は絶対に爆発しないことを意味しない。実務上は、熱暴走の発生確率低減、セル間伝播抑制、ガス排出、電池箱の耐衝撃、事故後の高電圧遮断、消防アクセスを含む。

 

・ BYD Blade Battery:LFPの化学安定性と長尺セル構造を組み合わせ、釘刺し等の安全試験を訴求。

・ CATL NP2.0/No Thermal Propagation:セル異常がパック全体へ伝播しない設計を強化。

・ 韓国勢:高Ni系の熱管理、セパレータ、難燃電解液、BMS診断を高度化。

・ EU:UNECE R100、Euro NCAP、EU Battery Regulationにより安全・履歴・材料情報を制度化。

・ 次段階:車載AIがセル温度、内部抵抗、微小短絡、衝突履歴から故障を予知し、充電出力を自動制限。

 

5-3. CCU・使用済み電池リサイクル

ここでいうCCUは、二次利用・回収・再資源化を含む循環型クローズドループとして整理する。電池は廃棄物ではなく、Li、Ni、Co、Mn、Cu、Al、黒鉛を含む都市鉱山である。

EU規則はリチウム系廃電池のリサイクル効率65%等を設定し、電池パスポート、再生材含有率、材料回収目標を段階導入する。中国はCATL/Bangpu、GEM、Huayou等が製錬・前駆体・セルまで閉環し、実装量で先行する。

出所・注記:EU Regulation 2023/1542 and EUR-Lex summaries; CATL/Bangpu public disclosures.

 

6. EVバッテリー原料・素材と先進材料

EVバッテリー自体にレアアースが大量使用されるわけではない。レアアースの主要用途は永久磁石同期モーターである。したがって『EV=レアアース電池』という表現は不正確である。中国の強みは鉱山埋蔵量だけではなく、分離精製、磁石合金、焼結、モーター、車両まで閉環している点にある。

次世代材料の本質は、単一材料の性能ではなく、コスト・安全・供給地政学を同時に最適化することである。LFPの再評価は、理論エネルギー密度で劣っても、材料調達、安全性、寿命、価格の総合最適が市場を動かすことを示した。

 

7. 自国生産カバレッジ・開発・デザイン・AI実装率

 

7-1. AI実装率の定義

AI実装率は、AIという名称の搭載有無ではなく、車両制御への権限深度で評価する。

 

8. 特殊技術・全体性能

中国車の『家電化』は表面的な大型画面競争だけではない。車内滞在時間を、移動、会議、娯楽、休息、決済、充電へ再設計している。欧州・日本の伝統的評価は走行・機械品質へ偏り、ソフト更新、音声、駐車、座艙サービスの生活価値を過小評価しやすい。

 

9. コストパフォーマンスVSグレード/モデル変更速度

 

10. ナビゲーション×AI×衛星連動の位置精度

車両位置はGNSS単独では決まらない。衛星、IMU、車輪速、カメラ、LiDAR、HD Map、V2X、基地局補正を融合する。

中国の優位は北斗衛星そのものだけではなく、基地局、道路データ、都市クラウド、通信事業者、車両メーカーを同一市場で結合できる点にある。日本のQZSSは高精度補強技術として強いが、車両OS・都市NOA・量産モデルへの統合速度が課題である。

 

11. 充電技術・満充電時間・インフラ浸透

出所・注記:IEA Global EV Outlook 2026。2025年末の公共充電ポイント概数。日本はIEA記載の2030目標との比較からの概数。

2025年末、世界の公共充電ポイントは700万基を超え、中国が470万基超で約65%を占めた。中国の高速・超高速充電器は約220万基に達し、インフラ自体が車両技術の量産実験場となっている。EUはAFIRにより主要道路60kmごとに150kW以上を求める。米国は家庭充電率が高いが公共網密度が低い。日本は2030年30万口目標を掲げるが、2025年時点の公共充電 stock から約8倍の拡大が必要である。

『満充電まで何分』は誤解を生みやすい。急速充電は通常10~80%を評価し、80%以降は電池保護のため速度が低下する。したがって、実生活では満充電時間より『10分で何km回復するか』が重要である。

 

12. 2025~2040年グローバル市場トレンド

出所・注記:2025実績はIEA。2030~2040はIEA/BNEF政策シナリオとODIN産業実装分析による幅。BEV+PHEV。

 

13. NEV:既存電池を超える次世代エネルギーとコスト

次世代NEVは一つの電池が全市場を置換するのではない。短距離・低価格はNa-ion/LFP、主流乗用車はLMFP・高密度LFP、高級長距離は高Ni・半固体・全固体、商用車は交換式・超急速・燃料電池が併存する。『単一の最高性能』ではなく用途別最適化が主流となる。

 

14. ガソリン車とNEVの消長

ガソリン車は一夜で消滅しない。燃料供給、寒冷地、長距離、地方、商用、低所得市場で残る。一方、新車開発投資は縮小し、規模の経済が逆回転する。部品点数、エンジン工場、変速機、排ガス後処理の固定費を少ない台数で負担するため、2030年代にはガソリン車の方が高コスト化する可能性がある。

 

15. 日本自動車産業:技術的参考と曇る未来

日本の課題は技術が存在しないことではない。モーター、インバータ、SiC、熱管理、品質、衝突安全、量産管理、ハイブリッドでは依然として世界上位である。問題は、これらの技術要素をBEV専用車、車両OS、電池供給、急速充電、AI座艙、都市NOAへ束ね、市場へ高速投入する統合速度である。

中国勢は毎年複数の新型車を投入し、価格、航続、充電、ADAS、内装を同時改良する。日本企業が5~8年周期の完成度重視を維持すれば、発売時点で仕様が旧世代化する。中国の挑発とは、政治的言葉ではなく、商品速度・価格性能・供給網密度によって日本企業の既存成功モデルを無効化する産業的圧力である。

 

16. ODIN PSIM最終洞察

第一:EV市場の勝敗は自動車会社だけでは決まらない。鉱物、精錬、電池、半導体、通信、衛星、クラウド、電力網、都市行政、回収業者まで含む国家産業システム競争である。

第二:中国の優位は補助金だけでは説明できない。2010年代の政策は需要を作ったが、2020年代の競争力は、品質改善、車種拡大、電池コスト低下、供給網学習、充電網、デジタル生活圏の累積である。

第三:米国のAI上限は高いが、Tesla一社への集中と政策変動が産業幅を狭める。EUは規則を作る力が強いが、規則が産業実装より先行するとコスト競争力を失う。

第四:韓国は電池と車両を同時保有するため、最も見落とされやすい均衡型競争者である。日本は技術部品の強さを完成車市場の強さと混同してはならない。

第五:2040年に重要なのはEV台数だけではない。車両が電力網の蓄電池となり、AIが運転・物流・保険・充電・保守を統合し、使用済み電池が次の電池材料へ戻る閉環が形成される。自動車は製品から、エネルギー・データ・移動サービスの節点へ変わる。

 

主要出所・参考資料

1.IEA: Global EV Outlook 2026: Trends in electric cars, batteries, manufacturing and trade, charging, outlook.

https://www.iea.org/reports/global-ev-outlook-2026

2.IEA: Global EV Data Explorer.

https://www.iea.org/data-and-statistics/data-tools/global-ev-data-explorer

3.ACEA: New car registrations 2025; Q1 2026.

https://www.acea.auto/pc-registrations/

4.Benchmark Mineral Intelligence: Global EV sales reached 1.75 million units in March 2026.

https://source.benchmarkminerals.com/article/global-ev-sales-reached-1-75-million-units-in-march-2026

5.PwC Strategy&: Electric Vehicle Sales Review Q1 2026.

https://www.strategyand.pwc.com/de/en/industries/automotive/electric-vehicle-sales-review-q1-2026.html

6.Tesla: 2025 Annual Report and Q1 2026 Update.

https://ir.tesla.com/

7.BYD: 2025 Annual Report and periodic reports.

https://www.bydglobal.com/cn/en/BYD_ENInvestor/InvestorAnnals_mob.html

8.Volkswagen Group: Annual Report and Full Year Results 2025.

https://www.volkswagen-group.com/en/annual-report-and-full-year-results-2025-20174

9.BMW Group: BMW Group Report 2025 and Q1 2026 Quarterly Statement.

https://www.bmwgroup.com/en/investor-relations.html

10.Hyundai Motor: 2025 management information and sales results.

https://www.hyundai.com/worldwide/en/company/ir

11.CATL: Second-generation Shenxing, Naxtra, third-generation Qilin official releases.

https://www.catl.com/en/news/

12.EUR-Lex: Regulation (EU) 2023/1542 concerning batteries and waste batteries.

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32023R1542

13.3GPP / C-ITS / GNSS agencies: Vehicle connectivity and positioning standards.

https://www.3gpp.org/

14.BloombergNEF: Electric Vehicle Outlook 2026.

https://about.bnef.com/insights/clean-transport/electric-vehicle-outlook/

15.EV-Volumes: Global EV sales and forecasts.

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注記:本報告は公開情報に基づく外部BDD型の産業・市場分析であり、会計監査、法務DD、技術保証、個別車両の安全保証を行うものではない。ブランド別・国別の完全な販売台数、EV単独売上高、利益率は統一開示されていないため、確認値・概数・合理的推計・非開示を区分した。将来予測およびPSIM指数はODINによる分析評価であり、企業または政府の保証値ではない。

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